山3477部隊 捨て身の切り込み 与座岳一帯が最期の地

山三四七七部隊第二十四師団制毒隊)で、戦記係に連絡のあったのは真柳倶也さん=室蘭市輪西町一八五=一人である。

制毒隊は満州では第三三部隊(一説には九三部隊)昭和十九年七月六日動員下令、十三日完結。七月十六日出発し八月五日、沖縄の東海岸、金武湾の石川港に上陸した。

二十年四月八日、歩兵第八十九連隊(山三四七六部隊)に配属のうえ、運玉森付近で発煙の任務をもって切り込み戦闘を行なった。

五月四日、小波津戦線で発煙の任務をもって戦闘し、二個小隊の約半数が戦死した。

五月二十日以降三十日まで、山兵団兵器勤務隊の修理要因をくり入れて特編歩兵一個大隊を編成、大隊長五十嵐正二郎大尉が指揮して、前田戦線を守備した。

六月十二日、東風平村、小城、志多伯方面で戦闘した。

以上が制毒隊についての厚生省援護課調査で、一般に信じられている山第三四七七部隊の行動だが、真柳手記によると、まったく違う。

以下手記によると、昭和十九年七月、動員下令。動員下令から三日後に、真柳伍長、山田兵長は、師団先発隊と一緒に釜山に出発(この間の本体の行動は私=真柳=が先発したため不明)

七月二十日、釜山着。本体の到着を待った。七月○日、本隊が到着。つぎの日、釜山を出発、下関に上陸した。それから沖縄出発の準備をし、七月三十日、門司港から沖縄に向かって出航。

八月五日、沖縄本島西海岸の渡具知湾から渡具知に上陸した(のち、米軍の上陸地点となったところ)

八月九日、渡具知から嘉手納を通り、中頭郡読谷村喜名小学校に約一カ月間駐とんして、南はコザ付近から北は名護付近までの一帯で気象観測を行なった。

九月上旬、喜名東方の山中(読谷山)にはいって陣地構築をはじめた。

十二月中旬、島尻郡新垣に移動、ここに駐とんして陣地構築開始。二十日ごろ、山兵団各部隊から、山三四七七部隊(制毒隊)に約百人増員された。

四月一日、南岸(米須海岸)から米戦艦六隻の砲撃をうけ、この日、米軍が嘉手納方面に上陸したと聞いた。

四月末、北上して首里付近の大名(おおな)で戦闘を開始した。六月上旬、新垣付近に後退した。

六月中旬、与座岳に移動して七月中旬まで戦い、全滅した。与謝岳一帯が部隊最期の地である。現在わかっている生残者はつぎの三人である。

出口勲さん=札幌市新琴似町五二六番地の二。

小沼広信さん=上川郡清水町旭山。

佐々木博さん=中川郡西足寄村字鷲府。

<編成>

▽部隊長=五十嵐正二郎大尉(山形)▽小隊長=黒田留五郎中尉(札幌市白石出身、戦記十回目の山三四七四部隊編成にある第二大隊第七中隊長黒田中尉であって、二十年三月上旬、山三四七七部隊に転属してきた)高橋金平中尉(山形)川﨑信実中尉(北海道)▽人事係中井長治准尉▽指揮班=長・岡沢博准尉、高橋新太郎曹長(山形)管野幸吉曹長(山形)中陣守人(釧路)▽分隊長=斎藤石松軍曹(山形)伊藤幸雄軍曹(山形)五十嵐定治軍曹(山形)大根田正二軍曹(北海道)若佐軍曹(北海道)長尾軍曹(小樽)酒向軍曹(山形)杉村博伍長(黒松内)西広秀(北見)西沼勝司伍長(函館市西川町十三の八)安保二郎伍長(夕張)丹羽博伍長(苫前郡苫前町字岩見)山田伍長(北海道)▽炊事班長=小野大作伍長(札幌市北七西二)▽軍医=大木中尉、北衛生軍曹(北海道)浅野伍長(北海道)▽経理=三浦軍曹▽獣医=坂本軍曹▽兵器係=真柳倶也伍長(室蘭)五十嵐部隊長以下約八十人。

自動車約二十台、軽戦車四台、除毒車二台、昭和十六年兵以降は、北海道出身兵が入隊した。山兵団の各歩兵部隊からの転属者が多い。何回も編成がえがあったため、分隊付だった下士官も分隊長になった。これにつづいて、制毒隊の戦死者二十四人の写真と氏名、住所、戦死場所、戦死日が送られてきているが、今回はスペースがない。その発表は次回第三十二回にまわして、この部隊の活動に関係があると思われるので運玉森で見たものを報告する。

運玉森の中腹、南斜面に、コークスストーブのエントツのようなものが二本、つぶれて投げすててあった。みじかいのも三本ほどあった。その時は、さびて、きたならしくて、なにがなんだかわからなかったが、制毒隊が、敵弾から日本軍をかくすために、煙幕をはる発煙作業をしたことが、この手記を読んでわかった。さいわい、カメラにおさめたので、ここにのせることができるが、輺重、工兵、この制毒隊と、みんな縁の下の力持ち的な存在だ。米軍が、沖縄戦は補給戦―との判断にもとづき作戦を進めたのに対し、海も空も補給路をたち切られたわがサービス部隊将兵は、捨て身の切り込み、戦車に体当たりする以外に、本文をつくす方法はなかったのだ。

 

沖縄戦・きょうの暦

5月1日

北部進撃中の米海兵師団は、南部決戦場に進撃開始。

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